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環境技術評価研究所:トピックス 地下水のシアン分析の留意点 |
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平成20年11月 1日 平成22年 4月 1日 平成22年 7月18日 環境技術評価研究所 代表 野々村誠 |
地下水中のシアン分析の留意点 平成20年10月25日に、千葉県柏市にある伊藤ハム㈱東京工場の地下水から基準値を超える0.02~0.03mg/Lのシアンが検出されたと発表されました。工場では、販売した商品を回収し、操業を停止してその原因を調査しているとのことです。 そこで、地下水からシアンが検出された原因を調査する場合に、下記の理由からシアン分析の観点から調査することも必要ではないかと考えます。 1.上水の水質基準と検査方法 平成15年5月に水道水質基準が改正され、シアン(シアン化物、塩化シアンの合計)として0.01mg/Lとなりました。このシアンの検査方法は次の方法が上水試験方法で定められています。
この場合、分析方法の観点から2つの点に注意することが必要です。 1) 地下水試料を保存するための前処理で塩化シアンを生成する事例がある。 2) IC-PC法で検査した時に、シアン様物質を生成する事例がある。 2. 試料の前処理での留意点 地下水中のシアンを検査する場合、試料中のシアンを安定に保つために酒石酸溶液を加えて保存することが定められている。しかし、地下水中にアンモニウムイオン(NH4+)が存在すると塩素処理をした時にクロラミンという物質が生成し、これが酒石酸や有機化合物と反応して塩化シアンを生成することが報告されています。詳しくは、次の文献をご参照ください。
この方法は、日本独自の優れた分析方法で、定量下限が0.001mg/Lで、精度よく測定できます。しかし、塩化シアンの発色を速めるために約100℃に加熱して測定しますが、この場合、地下水中の有機化合物(アミノ酸、フミン酸類)と次亜塩素酸が反応してシアン様物質を生成することが報告されています。
このような事例があることを理解した上でシアンの検査を行い、検査結果を判断することが必要です。 4. 地下水中のシアン分析のその後 1) 20年12月5日:伊藤ハム㈱調査委員会が経過報告 ・シアンの分析方法には触れないと報告 2) 20年12月25日:伊藤ハム㈱調査委員会が調査報告書を発表 ・シアンが検出された原因は、不十分な塩素処理により、地下水由来の有機物や分析時に添加する緩衝液(酒石酸)と反応してシアンを生成したものと推論している。 http://www.itoham.co.jp/ 3) 21年10月21日 厚生労働省は水質検査で「酒石酸緩衝液」から「りん酸緩衝液」に変更し、パブリックコメントを求める。 4) 22年2月17日 厚労省告示第48号:「シアンの水質検査法の改正」、4月1日施行。 厚生労働省は水質検査で「酒石酸緩衝液」から「りん酸緩衝液」に変更した。 http://www.mhlw.go.jp/ 上記HP→行政分野ごとの情報:健康→水道課→指導対策→水道水質情報(→水質検査→検査方法) 5) 改正後のりん酸緩衝液を使って分析した時のクロマトグラムがあります。 (ダイオネクス資料:0148) 排水や廃棄物からのシアンの生成事例についての報告は、下記のホームページでも紹介しておりますのでご参照ください。 HP: http://www.nonomura-eriet.jimusho.jp/ Googleで「eriet」と入力しますと環境技術評価研究所のHPが出てきます。 環境技術評価研究所 代表 野々村誠 〒341-0041 埼玉県三郷市戸ヶ崎2954番地1 クレストフォルム水元公園107号室 TEL/FAX:048-954-5402 携帯:080-6774-3599 e-mail:nonomura_eriet@yahoo.co.jp ↑(下付き) |